謎の昆虫食を前にして。

BSで、何か一芸に秀でた達人を紹介する番組がやっていた。
その中に、昆虫を食材として使う(使いたがる)料理研究家―昆虫食研究家と言ったほうが適当かもしれない―が取り上げられていた。
私自身の意識ではゴキブリ、カブトムシ、クワガタなんてものは食の範疇外、アウトオブイーティングだと思われるのだが、その研究家はその他にも十数種類の昆虫を食したことがあるという。昆虫が21世紀の食糧として注目されている、というのは耳にしたこともあるが、実際、「シケイダのフライとムーワパースのフリッター」「イモムシのリゾット」と言った常人には理解しがたい昆虫食を前にすると日本の食生活もここまできましたか、と変な懐疑感と厭世観を抱いてしまって仕様がない。ゲストタレントもそう感じたのだろうか、心なしかコメントも後ろ向きのように感じられた。
タレントが試食する場も設けられていたのだが、視聴者に「食べたくない、食べたくない」と発信していたように見えたのは私だけであろうか。確かに、一見南青山のフルコースに出てきそうな盛り付けでありながら、実態はセミの幼虫のフライである。気の毒お気の毒、けど視聴者の全信託を受けた君らタレントが頑張ってもらわなきゃねと思いつつ、久しぶりにタレント・負の活動を目の当たりし、同情の念が沸いた。
未知への挑戦「昆虫食」への興味、期待、そして恐怖に襲われていますと言った神妙な面持ちで料理を口にしていたタレントを見ていると、どうもお笑い系の俗番組と変わりなかった。が、これはあくまで親方半・日の丸、何はともあれあの日本放送協会である。単なるゲテモノ食いを(失礼)、特定の分野に対し熱意、そして秀でた専門性を持った達人、というランクアップを可能にしたのは日本放送協会のブランド力他ない。

誰かが食糧は等差数列的にしか増えないと説いていたが、実際そのような昆虫食を主食に据えなければならない日がくるのだろうか。本当に、貴重なタンパク質源となる日がくるのだろうか。できれば、私は、私が生きている間は、米飯を希望しているのだが・・