「手紙」映像化

只今施工中


三度の食事より愛してやまない東野圭吾の作品がまた映像化されるそうで。加えて手紙ときた。あー観たい観たいミクシィの東野コミュを見る限り「手紙」はあまり人気がない。なさ過ぎる。人気のなさに認知度を疑ってしまうくらいだ。しかし私は隠れた名作だと思っている。

手紙は「差別」「偏見」が軸の短編小説。殺人犯の兄を持つ弟が、その不条理な運命に戸惑い、翻弄されながらも生きていくという話だ。兄が殺人犯ということで常に偏見視される弟の日常が、上手く描かれている。確かに、東野圭吾特有の"考えさせる読み応えのある"作品ではない。いつもの、最後にあっと思わせる仕掛けもない。喉ごしが良すぎる言えば良すぎる、つまらないと言えばつまらない。「白夜行」や「幻夜」と比べるとどうしても劣ってしまうのがこの作品だぶっちゃけ総合評価だと幻夜の方が好き。私が名作と推す所以は作品の軸である差別や偏見意識へ対し積極的に啓蒙している点にある。この点では他の作品を圧倒している。読者に、他者への思いやり、想像力を積極的に喚起している点では他よりも評価できると思うのだ。積極的に喚起していると言えば北条民雄いのちの初夜」もそうだ。(ちなみに、いのちの初夜とはらい病(現ハンセン病)患者である作者の、半自伝的小説である。書店では入手困難(そもそも文庫化されているのか?)なので青空文庫で入手するのが手っ取り早い)実際、両作品の読後感はほぼ同じだった。「差別や偏見を完全に撤廃することは難しい。だが撤廃しようとする姿勢が重要ではないか?」「しかし必ずしも差別や偏見の存在を否定することはできない。これが必要悪と言うものか」など、差別・偏見、ひいては人権とは何かということまで考えた。どちらも読んだのは2年以上前だから細かいところは忘れてしまったが。とにもかくにも、積極的に一石を投じようとするその姿勢は評価できる。本当に意欲作だと思う。


ここ数年東野圭吾の作品はよくいじられている。ドラマ化映画化ときて舞台化までされているというから、その勢いは留まることを知らない。最近舞台や演劇に興味がある私にとって、舞台化される「白夜行」はまさに眉唾もの。行きたいっス。(高見盛風)
以前WOWOW藤木直人柏原崇主演のドラマ「宿命」がやっていた。そのとき既に読み終えていたが、何となく見るのは躊躇われた。よく「原作の雰囲気が壊されていたら嫌だから敢えて見ない!」という人がいる。その主張、イマイチ理解出来なかったが、いざ宿命が流れると分かるような気がした。逆にその反対、、原作の雰囲気を保ちつつそれを凌ぐような作品に仕上がっている可能性もあるけど、何か怖い。見ても見なくても生きていけるんなら見ないで原作の雰囲気に浸った方がいいんじゃないの、そう思ってしまう。
そんなことを考えるうちに「白夜行」の舞台を見るのもちょっと気後れしてきた。。